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犬の心肺機能の強化

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人も犬も外気から取り込んだ酸素を使ってエネルギーに換え、主にそのエネルギーで運動しています。肺に取り込まれた空気は肺で酸素と二酸化炭素に分解されて、酸素は赤血球(ヘモグロビン)を通じて全身に運ばれます。ヘモグロビンは全身で出た二酸化炭素を肺まで運んで外に排出する仕事も行います。その酸素を取り込んで二酸化炭素を出す仕組みを「呼吸」といい、この呼吸システムによってカラダの健康を維持する機能を「心肺機能」といいます。

運動を行う時は休息している時よりも多くの酸素が必要となりますので、呼吸回数を増やさねばならず、息が荒くなります。

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高山トレーニング

アスリートが試合前に高山にこもって心肺機能強化トレーニングをする話をよく耳にしますが、これは、高度の上昇に従って気圧が下がることで酸素の濃度が減り、呼吸が自然と制限されるからなのです。呼吸が制限される環境に身を置くと、自然と酸素の少ない外気環境にカラダが慣れる=赤血球が増える=呼吸の効率が良くなる=心肺機能が向上する、という理由だとされてきましたが、筋肉自体が持久力を上昇させるということもわかってきています。

低酸素状態と運動能力

ただし、喫煙や肥満でも同じく赤血球が増えるとされていて、赤血球もあまり増えすぎると血管などの健康を害してしまうリスクがありますので注意しましょう。

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心肺機能を向上させる水泳

ところで、よく水泳は心肺機能の向上に役立つ=酸素を取り込む能力が上がると言われていますが、それはなぜでしょう? 潜水運動と異なって鼻は空中に出ている、つまり酸素は空中から供給されますので、散歩などと比べて、取り込まれる酸素の量は変わらないような気がします。ところが、実は、泳いでいる時はその酸素を思ったように取り込めなくなってしまうんですね。

それは、外気から酸素を取り込むためのカラダの仕組みに原因があります。まずは、そこから説明します。

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胸の骨格と肺の動き

犬の肋骨人も犬も、肺は肋骨に囲まれた胸郭の中に位置しています。胸郭には外気を取り込む部分がなく、中にある肺だけが鼻を通じて外気に触れています。その胸郭を拡げると胸郭内の圧力は下がるわけですが、肺が空気で膨らむことで胸郭内の圧力が調整されるわけです(小学生か中学生の時に「へーリングの模型」で勉強された方も多いのではないかと思います)。これが外気から酸素を取り込む吸気システムです。

この胸郭を拡げるためには、肋骨が動かなくてはなりません。この肋骨を動かすのが、横隔膜や肋間筋という筋肉です。この筋肉は脳(延髄)に支配されていて、脳が筋肉を動かすことで呼吸ができるというわけです。

ここまでの説明を読んでも、なぜ水泳が心肺機能につながるのかよくわからないと思いますので、次に行きます。

犬の肋骨横隔膜や肋間筋が収縮することで肋骨が広がるのですが、それを邪魔するのが「水圧」なのです。空中に比べると水中ではカラダ全体により強い圧力が掛かります。この圧力は深くなるにつれて強くなってくるのですが、水面から60cmより深く潜るともう自分の力で空気を吸い込むことができなくなってしまいます。つまり、筋力が水圧に負けてしまうわけです。
スキューバダイビングはボンベで圧縮された空気を送ってくれるから呼吸ができるんですね。

ちなみにその時肋骨がどう動くかというと、左の図のように前に行く動きをします。左右の肋骨は真下の胸骨という骨でつながっていますので、横に広がることはできません。ただ、一番尾に近い左右一対の肋骨(浮遊肋)だけは横に広がります。この一対は「浮遊肋(ふゆうろく)」と呼ばれるだけあって、左右がつながっていないので横に広がることができるわけです。

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心肺機能を強化する

犬のウォーターセラピーおわかりいただけましたでしょうか? 長時間の散歩などの地上運動でも心肺機能を向上させることはできます。しかし、水の抵抗(前に動こうとする肋骨が水中を前に進むことで受ける水の抵抗)を受ける水中で肺の動きを制限しながら筋肉に負荷を与える水泳は、心肺機能向上という意味では優れた運動なんですね。もっとも、一回やっただけでカラダが変わるわけではありませんので、できれば水泳は継続してやらせたいものです。

最後に。アメリカで、心肺機能の高い「人」はがんになりにくいという研究結果が発表されました。ゴールデンレトリーバーやバーニーズなど、がんにかかりやすいと言われている犬たちと生活されている方は、日ごろの運動として水泳を検討されてみてもよろしいのではないかと思います。

swimming effect

心肺機能が高い人はがんにかかりにくい
Cardiovascular fitness in middle-aged men reduced cancer risk, mortality
Cardiorespiratory fitness levels predict risk for cancer diagnosis, mortality

ただし、くれぐれも、すでに肺や心臓などの循環器に大きな問題を抱えている犬を泳がせるのは絶対に避けてください。悪化どころかそれが原因で死に至ることもあります。

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クレール・コンサルタント