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犬のカラダづくりのプロセス

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カラダづくりの理論はわかっても、どうやって健康なカラダにしてやるのが良いのかその具体的な方法や手順がわからないことには、その理論は画餅となってしまいます。

ここではさらに一歩踏み込んで、愛犬の健康なカラダを作り上げるプロセス要素としての「強度や頻度」を探っていきます。

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漸進性の原則

トレーニングの4原則の内、カラダづくりプロセスで特に大切なのは「漸進性の原則」です。「漸進性」というのは、イコール「漸増性」ではありません。負荷の加減は一気ではなく少しずつ変えていきましょう、ということです。

トレーニングは強めの負荷を継続して与えないことには意味がないとされていますが、この「過負荷」は、強度においても時間においても頻度においても、どの犬にも当てはまる数値が決まっているわけではありません。
運動欲求の強い犬にとってライフワークとも言えるカラダづくりトレーニングは、個体を観察しながらその個体にあった運動をやらせなければならないのです。ただ、幼い犬や運動不足の犬は負荷を次第に強めていきますが、高齢犬になると「過負荷」を保ちながらも少しずつ弱めていく必要がある場合もあります。

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無酸素運動の強度

人のレジスタンストレーニングでは「筋力強化(筋量を増やさずに筋力を高める)」「筋肥大(筋量を増やしながら筋力を高める)」「筋持久力を高める」という目的別に負荷のレベルを変えています。「RM」というのは、「Repetition Maximum」の略で、何回まで繰り返すことができるかという観点から筋力における負荷のレベルを定めたもので、1RMは1回しか繰り返せないほど強烈な負荷を、50RMは50回繰り返してはじめて継続できないくらいのやや軽めの負荷を指しています。人それぞれに合った負荷を決めることになります。

負荷強度(%1RM)RM主たる効果
100筋力
95
93
90
87筋肥大
85
80
77
7510-12
7012-15
6715-18
6518-20筋持久力
6020-25
5030-

人のトレーニングにおいては、どのレベルの運動をどれくらいの時間、どれくらいの頻度で行えば良いのか研究に研究が重ねられています。ただ、この負荷を与える作業は、犬のトレーニングでは重いタイヤやソリを引っ張らせる運動くらいのものですが、現実的ではありませんので、ここでは参考程度に掲載しておきます。
(石井直方『究極のトレーニング』講談社,2008年,p.148より引用)

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有酸素運動の強度

人のトレーニングでは、持久力向上のための運動でも最適レベルが研究されています。
文科省が出している「20mシャトルラン 最大酸素摂取量推定表」などを利用して各運動がどれくらいの持久力における負荷なのかを酸素摂取量で決めようというものですし、フィットネスクラブなどでは心拍数で負荷を決めています。
ただ、どちらも計測機器が必要になりますので、犬の運動強度測定には適していません。

私が参考にしているものは、日大・枝村先生が提示された「自覚的運動強度指数」という表です
(枝村一弥『小動物臨床におけるリハビリ入門』ベッツワンプレス,2010夏号(Vol.23)より引用)。

指数状態様子
全く疲れていない疲労感や呼吸促迫は認めない
不安な様子もなく歩行は正常
やや疲れている疲労の徴候が見え始めている
呼吸促迫は認められない
不安な様子もなく歩行は正常
少し疲れている疲労の徴候が見え始めている
呼吸促迫を認める
少し不安な様子があるが歩行は正常
少し疲れてきている2よりも疲れている状態
疲れてきている中程度の疲労が認められる
常に呼吸促迫:努力性呼吸はない
軽度に不安を感じている:歩行は正常
疲れ始めている4よりも疲れている状態
疲れている疲労が認められる
激しい呼吸促迫:軽度の努力性呼吸
動きがゆっくりでやる気を感じない
本当に疲れている疲労が認められる
激しい呼吸促迫:中程度の努力性呼吸
歩行時に時々つまずく程度:歩行時の35%以下
7と同様であるが歩行時の35〜75%でつまづく
非常に疲れている7と同様であるが、かなり不安である
歩行時に75〜100%正常に歩行できない
10力尽きている息が詰まり開口呼吸している
不安になりへたり込んでいる

犬のフィジカルトレーニングでは、筋持久力強化運動を中心として行い、階段や坂道などを利用した自重トレーニングを取り入れることで筋力強化に期待するのが最も現実的だと考えています。とどのつまり、上記「自覚的運動強度指数」に従って犬の様子を観察しながら、レベル6あるいは7を有酸素運動としての「過負荷運動」とし、強度も時間も犬の様子を見ながら徐々に増やしていくということです。
高齢犬や障害犬は特にその見極めが重要となります。

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運動強度と免疫力

運動が免疫力を増強してくれることは広く知られていますが、強度によっては下げてしまうこともあります。非常に粗い説明ですが、激しい(過度の負荷を与える)運動は免疫力を下げ、感染症にも罹患しやすくなり、適度な運動(至適運動:個体差がある)では、逆に免疫力向上につながるとされています(鈴木克彦『総説 運動と免疫』日本補完代替医療学会誌第1巻第1号,2004年2月)。

免疫力が衰えてくる高齢犬の運動は、特に運動強度を考えながらやらせないと逆効果になりかねませんので注意が必要です。

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クレール・コンサルタント