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犬の関節の動き

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フィジカルトレーニングでも理学療法でも、関節がどう動くのかということについて共通言語が必要になりますが、関節の動きは、基本的に三次元(矢状面・横断面・背断面)に沿った動きとして捉えるとわかりやすいと思います。

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犬の三次元運動面

犬の運動面

このサイトでは、横から見たら壁になる面を「矢状面(しじょうめん)」、前から見たら壁になる面を「横断面(おうだんめん)」、床に平行する面を「背断面(はいだんめん)」としています。

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矢状面運動(前後上下)−屈曲・伸展

矢状面の関節運動「矢状面(しじょうめん)」というのは、犬のカラダを左と右に分けて切断した時の面です。

頭を上げ下げしたり、背中を反ったり曲げたりといった椎間関節の上下への屈伸、肩関節・肘関節・手根関節・股関節・膝関節・足根関節の前後上下への屈伸はこの面に沿って行われます。

屈曲や伸展は矢状面運動」と覚えれば早いと思います(※椎間関節の側屈は背断面運動)。

通常の散歩−直進歩行−時の関節運動は、代表的な「矢状面運動」となります。

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横断面運動(上下左右)−内反・外反と内転・外転

横断面の関節運動「横断面(おうだんめん)」というのは、犬のカラダを前と後ろに分けて切断した時の面です。

肩関節や股関節を左右に開閉する(内転・外転)運動や体幹をひねる運動はこの面に沿って行われます。また、肘関節や膝関節が左右に曲がった状態(内反・外反)もこの面に沿っています

内外転、体幹ひねりは横断面運動」と覚えましょう。

カラダの向きを左右に変える時の四肢の関節運動(内外転運動)は「横断面運動」となります。

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背断面運動(前後左右)−内旋・外旋

背断面の関節運動「背断面(はいだんめん)」というのは、犬のカラダを上と下に分けて切断した時の面です。

肘関節や膝関節を内側や外側にひねる(内旋・外旋)運動はこの面に沿って行われます。また、屈伸運動ではありますが、椎間関節を左右に曲げる(側屈)運動もこの面に沿って行われます。

側屈や内外旋は背断面運動」と覚えます。

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椎間関節の可動域

体幹が曲がる時、体幹のどこが曲がりやすくどこが曲がりにくいのかを把握しておくことは大切です。ただ、犬の脊椎関節可動域についは研究結果が見つからないため、人の解剖学で説明します。

椎骨と椎骨の間にある椎間関節は「平面関節」というあまり可動しない関節です。ただ、多くの関節が同方向に曲がることで、脊椎全体つまり体幹としては大きな可動域を得ることができます。ここが可動域の大きい球関節である肩関節や股関節などとは異なります。

前屈・後屈でよく曲がるのは首と腰。胸はほとんど曲がりません。首の中でも、頭蓋骨後頭部とC1間の関節、いわゆる「環椎後頭関節」は「Yes-movement-joint」と呼ばれるだけあってよく前後に曲がります。

側屈は、どこも万遍なくよく曲がりますが、C2-C3間以下の首が一番よく曲がります。C1-C2間(環軸関節)は側屈できません。

よく回るのはC1-C2間、つまり環軸関節です。まあ「No-movement-joint」と呼ばれるほど回るためにあるような関節ですから当然といえば当然です。他の椎間と比べものにならないほどはるかによく回ります。一つ上の頭蓋骨後頭部とC1間の関節(環椎後頭関節)は回りません。胸椎の後半から腰椎もあまり回りませんのでここに回旋負荷のかかる運動には注意が必要です。

さあ、肝心の犬の場合はどうなのでしょう? ……データがないことにはわかりませんし、常に体重がのしかかっている人の腰椎と四つん這いの犬の腰椎では進化の具合が異なるのかもしれませんが、形は似ていますので、腰椎のひねり運動やストレッチなどの際には注意しながらやった方が良さそうです。

ヒトの椎間関節可動域(度)

椎間関節屈伸側屈回旋
頭蓋骨後頭-環椎(C1)13
環椎(C1)-軸椎(C2)1047
C2-C310
C3-C4131111
C4-C5121112
C5-C61710
C6-C716
C7-T1
T1-T2
T2-T3
T3-T4
T4-T5
T5-T6
T6-T7
T7-T8
T8-T9
T9-T10
T10-T11
T11-T1212
T12-L112
L1-L212
L2-L314
L3-L415
L4-L517
L5-S120

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回内・回外

もう一つ理学療法学や身体運動学では「回内(かいない)」「回外(かいがい)」という関節運動が出てきます。

犬の運動では主に「肘関節」について出てくる言葉です。上腕骨に対して前腕骨をカラダの内側にひねるのが肘関節の「回内」、外側にひねるのが「回外」なのですが、大腿骨に対して下腿骨をひねるのは膝関節の「内旋」「外旋」と言います。肘関節も膝関節も同じ構造をしているように見えるのですが、なぜ呼び方が異なるのでしょうか?

そこには関節の仕組の違いがあるのです。

関節の動きには、その接する面での接触変化が異なる3つの形があります。

関節の転がり

転がり(Rolling)

「Rolling」とは、関節する骨の接触部が滑ることなくどちらか一方もしくは両方の骨が傾く動きです。接触部はさほど滑り抵抗を受けません。

関節の滑り

滑り(Slide)

「Slide」とは、関節する骨の接触部が滑りながらどちらか一方もしくは両方の骨が傾く動きです。軟骨は摺動性が高い(滑りやすい)とは言え、転がりよりは滑り抵抗が高くなる動きと言えます。

関節の回旋

回旋(Spin)

「Spin」とは、関節する両方の骨の中心を結ぶ直線が傾かずにどちらか一方もしくは両方の骨が軸に対して直角の面で回転する動きです。最も滑り抵抗の大きい動きです。

肘関節と膝関節

実は、膝関節は大腿骨と脛骨が関節しているだけですので、転がりか滑り、回旋のいずれかひとつの動きが生じます。脛骨と腓骨を関節する脛腓関節というものがありますが、この関節はほぼ動くことはなく、膝関節の屈伸や内外転などには影響を与えません。
一方、肘関節は、腕尺関節、腕橈関節、橈尺関節という3つの関節が絡み合った複合関節であり、同時に転がりや滑り、回旋など複数の動きが生じます。
そういった仕組の違いから、肘関節では、同じひねりであっても、単一の回旋運動である「内旋」「外旋」という言葉ではなく、「回内」「回外」という言葉が使われることになります。

※ 回内・回外を肘関節の動きではなく前腕部の動きとしている説明もあります。

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クレール・コンサルタント