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アイソトニックとアイソメトリック

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曲げたり伸ばしたりしながら力を発揮する筋肉を「屈伸筋」、細かく言えば、曲げる時は「屈筋」、伸ばす時は「伸筋」と言い、長さを変えずに力を発揮する筋肉を「抗重力筋」と言います。重力ではない負荷に対して長さを変えずに力を発揮する場面も多いのですが、ここでは、重力以外の負荷に抗う場合も「抗重力」とします。この筋肉が屈伸筋でこの筋肉が抗重力筋、と分かれるわけではなく、同じ筋肉でも曲げ伸ばししている時は「屈伸筋」として働いていますし、曲げていないのに力が入っている時は「抗重力筋」として働いています。筋肉の名称というよりも働き方の名称です。

今回は、「屈伸筋」を鍛える運動である「アイソトニック・トレーニング(等張性収縮運動)」と「抗重力筋」を鍛える運動である「アイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動)」について説明します。

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屈伸筋を鍛える

犬の屈伸筋骨は筋肉が縮んだり伸ばしたりすること(屈伸)で動くわけで、つまりは、カラダが動くのはこの筋肉の動きによるものと言えるわけです。この時カラダを動かしている筋肉が屈伸筋です。伸ばす時には力を抜いてるだけだから、「屈筋」で良いのではないかと思うかもしれませんが、伸ばす時にもブレーキとして力を入れる場合が多く、その時は「伸筋」が働いていることになるわけです。

アイソトニックという、「筋肉の長さは変わるけれども負荷(に対する筋肉の張力)は変わらない」ことを意味する言葉があります。例えば立ったり座ったりする運動(スクワット)を行う時、伸びたり縮んだりする足の筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)に掛かる体重は最初から最後まで変わりません。手でダンベルを持ち上げる運動でも同じく手の筋肉(上腕二頭筋や上腕三頭筋)に掛かるダンベルの重さは変わりません。

こういった運動をアイソトニック(等張性収縮)運動といいます。

犬が歩いたり、泳いだり、飛び跳ねたりする運動(運動と呼ばれるほとんどの運動)は、この屈伸筋を鍛える運動と言えるでしょう。

ちなみに、詳しい説明は避けますが、アイソトニック(等張性収縮)運動中、筋肉を縮める運動(コンセントリック・トレーニング:短縮性運動)よりもブレーキとして働く時の筋肉を伸ばす運動(エキセントリック・トレーニング:伸張性運動)の方が筋肥大や糖代謝に効果的であることが分かっていて、高齢犬に運動させる時、筋力維持の観点からは「登坂歩行」よりも「降坂歩行」の方が適していると考えられています。

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抗重力筋を鍛える

犬の抗重力筋ずっと立ち続けている時には、足や姿勢を保つための背腹などの筋肉に力を入れていますし、動かない壁を押し続ける時も手や胸の筋肉に力が入っています。この時、筋肉の長さは変わらないけれども力は入っている状態で、「抗重力筋」が働いていることになります。

この「筋肉の長さは変わらないものの力が入る」ことをアイソメトリックといい、その運動を「アイソメトリック(等尺性収縮)運動」といいます。

ここまで書くと、筋肉を鍛えたい時は屈伸筋を鍛えておけば、つまりアイソトニック(等張性収縮)運動だけで十分ではないかと思われるかもしれません。しかし、特に歩行リハビリテーショントレーニングにおいてはこのアイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動)が非常に重要となるのです。

アイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動)は関節も骨も動きません。ただ筋肉が収縮するだけです。ここで少しだけ「収縮」という言葉を定義します。通常、「収縮」というと縮むこと=長さが短くなることを意味するのですが、筋肉の活動において「収縮」とは力が入ることを意味します。ですから、アイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動)では、「筋肉の長さは変わらないけれども筋肉は収縮している」と説明されるわけです。

ここに長い間まったく後肢を動かしていない犬がいて、飼い主はこの犬に何かしらの運動をさせることで、何としても自分の肢で歩かせたいと考えているとします。あなたがこの飼い主であればどんな運動をさせますか?

前肢だけで動き回れる車椅子だと、犬は喜ぶかもしれませんが、後肢の機能が戻ることは期待できません。ハーネスで吊りあげて歩行練習をさせると、おそらく関節やパッド、皮膚をやられます。私たちは、こんな犬には、立位保持運動から始めることを勧めています。上からハーネスで吊ってもいいですし、お腹の下にバルーンを置いてもかまいません。すべての体重ではなく、いくばくかの体重を掛けたまま立った状態を保持することで、抗重力筋を鍛えることから始めるのです。いわゆるアイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮運動)による筋力の強化です。

立位保持運動この立位保持運動には、抗重力筋を強化する目的以外に、立位の記憶回復や姿勢筋緊張による神経リハビリテーション・トレーニングとしての目的もあります。

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クレール・コンサルタント