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canine anterior cruciate ligament

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犬の前十字靭帯前十字靭帯は、膝関節の中にある関節内靭帯で、左の図の赤い部分です。

腓骨は脛骨の外側に位置していて、左図で、【前面】のイラストは頭の方から、【右面】は右側面から右膝関節を見ています。前十字靭帯は関節内靭帯ですので、実際は骨の内側にあり、こんなにはっきり見えるわけではありませんが、靭帯の伸びる方向はわかりやすいと思います。

前十字靭帯は、前から見ると上外側から下内側に向かって斜めに、左外側から見ると上後ろ側から下前側に向かって斜めについています。

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垂直跳び

まずは、垂直跳びが前十字靭帯に与える影響を説明します。

犬の前十字靭帯犬が垂直跳びをして着地する時、自らの体重を支えるメイン関節が膝関節なのですが、着地面から受ける力で脛骨が大腿骨の前方に出ようとします(前方滑り出し)。その滑り出しを防いでいる靭帯が前十字靭帯なのです。つまり、垂直跳びを何度も繰り返すことで、前十字靭帯には大きなストレスが掛かることになり、そのストレスに耐え切れなくなった時、切れてしまうことになります。

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ヒザの内旋

膝関節はふとももにある大腿骨とその下の脛骨で成り立っている関節です。その関節には、日常的に「ヒネリ」が生じます。その「ヒネリ」を内旋・外旋と言い、膝関節を正面から見た時、大腿骨に対して脛骨が内側にヒネられることを「内旋」、外側にヒネられることを「外旋」と言います。あくまで「大腿骨に対して脛骨が…」ですので、逆に言えば、脛骨に対して大腿骨が外側にヒネられると、それも「内旋」と呼ばれることになります。
例えば、立った状態から右にカラダをヒネった時の右膝関節は「内旋」という運動を与えられたことになるのですが、それは、大腿骨が脛骨に対して外側にヒネられるからです。

犬の前十字靭帯右のイラストは、犬が後方に投げられたボールを、右回りで追いかけようとしているものです。この時、犬の右膝関節は、大腿骨が脛骨に対して外側にヒネられることになります。つまり、右膝関節に「内旋」が与えられることになります。

なぜ「内旋が…内旋が…」としつこく説明するのかというと、ヒザを正面から見た時、前十字靭帯は上外側から下内側に向かって斜めについていますので、膝関節の内旋(脛骨が大腿骨に対して内側にヒネられるor大腿骨が脛骨に対して外側にヒネられる)運動は、前十字靭帯を引っ張ることになり、そのストレスに耐え切れなくなった時、切れてしまうことになるからなのです。

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外旋+外反

垂直跳びや内旋運動が前十字靭帯にストレスを与えるのはおわかりいただけましたでしょうか?
実は、もう一つ前十字靭帯を傷める運動があります。それは、人の前十字靭帯損傷の主な原因となっている「外旋+外反」という運動です。

先ほど「内旋」が前十字靭帯にストレスを与えると説明しました。前十字靭帯を引っ張る形になるからです。ということは、その逆の「外旋」であればストレスにはならないはずです。そうなんです。「外旋」は前十字靭帯に直接引っ張る運動にはならないのです。しかし、そこに「外反」が加わると事情が変わります。

再度同じ説明を行います。膝関節は上の大腿骨と下の脛骨で成り立っている関節です。その関節には、日常的に、膝関節を正面から見た時の横方向への「ソリ」も生じます。その「ソリ」を内反・外反と言い、膝関節を正面から見た時、大腿骨に対して脛骨が内側に曲がった状態を「内反」、外側に曲がった運動を「外反」と言います。あくまで「大腿骨に対して脛骨が…」ですので、逆に言えば、脛骨に対して大腿骨が内側に曲げられると、それは「外反」と呼ばれることになります。
例えば、立った状態から膝関節がカラダの内側に折れた状態は「外反」という運動を与えられたことになりますが、それは、大腿骨が脛骨に対して内側に曲げられるからです。

犬の前十字靭帯右のイラストをご覧ください。大腿骨の外側にある出っ張りを「外側顆」と言います。ヒザが「外旋」することで前十字靭帯は緩みます。緩んで「外側顆」に近づきます。そこまでなら前十字靭帯は傷みません。ところが、近づいた時に「外反」が加わると、その「外側顆」が前十字靭帯を押しつぶしてしまうことになってしまいます。それが、前十字靭帯損傷の3つ目の原因となる運動なのです。

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前十字靭帯の健康を守る

靭帯は、筋肉や骨のように強い負荷で鍛えられる組織ではありません。しかし、伸縮性に富んだ筋肉が靭帯の弾力性を維持する面もありますので、筋肉を鍛えることが間接的に靭帯を守ることにもなります。人のスポーツ医学では、前十字靭帯損傷を予防するプログラムが作られていますが、犬についてはまだ聞いたことがありませんので、これから作っていこうと思います。

基本的には、関係する筋肉を鍛えると同時に長期間にわたる膝関節への高負荷運動を避けることが肝要となります。

また、膝蓋骨(パテラ)脱臼が前十字靭帯に与える影響も頭に入れておく必要があります。詳細はまたの機会に書きますが、膝蓋骨の内方脱臼は膝関節の常時内旋状態を招くため、前十字靭帯は常時引っ張られた状態になります。ですから、脱臼についてはそんなに心配する必要のない低グレードであっても、膝蓋骨の内方脱臼と診断された犬に運動をやらせる時は、前十字靭帯を傷めないよう細心の注意が必要となります。

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クレール・コンサルタント