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変性性脊髄症

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開く血液脳関門

中枢神経と血管の間には、免疫細胞やウイルス、大きなたんぱく質などを脳や脊髄に侵入させない血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)という関所のようなシステムがあります。
脳や脊髄はカラダ全体の活動を支配する司令塔ですので、中枢神経機能と免疫機能はお互いに独立していて、有害なものはとにかくシャットアウトするようにできている、と考えられてきたんですね。ただ、脳や脊髄も免疫反応である炎症を起こしますので、一部では、血液脳関門にも免疫細胞やウイルスなどの入り口となるゲートがあるのではないか、と考えられていました。

もちろん、その詳細はまったくもって闇の中だったのです。

2012年、大阪大学の村上正晃准教授らの研究グループが、そのゲートが第5腰椎の背側の血管内皮細胞にあり、重力刺激に惹起された感覚神経および交感神経の活性化がゲートの形成に関与している、ということを明らかにしました。
実験は、マウスのしっぽを天井から吊るしてヒラメ筋への重力刺激をなくした時の影響を調べたものですが、吊るした状態だけだと炎症が抑制されたものの、吊るした状態でヒラメ筋に電気刺激を与えると第5腰椎の血流速度が上がり、炎症促進物質が集まることがわかったのです。

同研究グループの結論は、普段の生活でヒラメ筋が間断なく受ける重力刺激が血液脳関門にゲートを形成させる、というものでした。

今後の展望

神経の活性化は、ストレスなどさまざまな外部からの刺激でも生じます。昨今活発に研究されるようになってきた「神経免疫学」という分野では、さまざまな病気が精神的なストレスなどで増悪(ぞうあく)する仕組、あるいは、逆に適度な運動が病気・病態を改善するメカニズム、さらに、鍼治療によってなぜ多くの病気・病態が改善するのかなど、今まで不明であった神経と免疫系の相互作用を解明しようとしています。これまで、この血液脳関門に拒絶されていた免疫系医薬品の成分が、このゲート形成によって脳や脊髄に到達できるかもしれないのです。

DMが治癒する?

もちろん、犬にはヒラメ筋というものがありませんので、このマウスの研究結果がそのまま犬も似たようなもの……なのかどうか、はわかりません。ただ、ヒラメ筋うんぬんよりも、第5腰椎に通じる感覚神経などの活性化が血液脳関門のゲート形成につながる、と推測できるのでしょうから、この研究結果は、DMなどの中枢神経系の難病やがんなどに対する予防法や治療法の開発に新たな可能性を与えることになると思うのです。ステージ4の肺癌と診断された私の知人は、その2年後、免疫療法を続けることで癌の消失に成功しました。

今後、人為的に神経の活性化を抑制または刺激することで、そのゲートを人為的に閉じたり形成したりすることが可能になり、免疫療法によるDMの予防や治療につながって欲しいですね。

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